第53回(2020年度)MBC賞 受賞者
団体 「マトヤ技研工業株式会社」
食肉処理における自動省力化機械の開発を通じて畜産業を活性化
鹿児島県は全国有数の畜産県で、その延長線上の食肉も全国トップクラスの生産と出荷を誇る。しかし、食肉処理の現場では、大部分を手作業に頼ってきており、いわゆる3Kの職場といわれ、高齢化や後継者不足が課題になっている。そこで、食肉業界の省力化につながる機械の開発に取り組み、地場産業の活性化に貢献してきた。
これまでに開発した食肉機械は40機種を超え、26の特許・実用新案も登録、オンリーワンの製品も数多く生み出し続けている。最初に開発した豚の肋骨を剥離する機械は、現在、全国の殆どの食肉センターで使用されるヒット商品となった。その後も開発を続け、鶏の首肉「せせり」を自動で切り取る機械や、牛大腸切開機、ボンジリ自動脱骨機、鶏腸切開機など、内臓処理機械では国内のナンバーワン企業として食肉業界から認知されており、全国でも80%を超える食肉工場で使用されている。
また、食肉機械はアメリカなど海外15ヵ国にも輸出、韓国、中国、タイ、フランスでは現地代理店と契約して販売している。
人口減少社会の中、オンリーワンの製品などを開発し続けることで、鹿児島のみならず国内の畜産業の活性化に貢献すると共に、その技術を海外にも伝えることで、鹿児島の価値をグローバルに発信することにも寄与している。
(1990年設立 代表取締役 益留 福一 曽於市)
団体 「日本ALS協会鹿児島県支部」
鹿児島のALS患者の療育環境の改善と患者・家族への支援活動
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、運動神経が冒され、筋肉が萎縮する進行性の神経難病。病気が進むに従い、話すことも食べることも、呼吸することさえも困難になっていくが、自立神経と頭脳は殆ど障害されることはない。原因不明で治療法も確立されておらず、国は333の稀少難病の一つに指定している。国によると、2018年末現在、全国に9805人、鹿児島県内には133人の患者がいるとされている。
日本ALS協会鹿児島県支部は、「難病にかかってしまったが、たくさんの良い方々に恵まれて幸せだった」と思える社会の実現を目指し、鹿児島のALS患者の療育環境をより良いものにしていくことを目的に活動している。
患者・家族会の開催や電話や訪問による相談活動、喀痰吸引をはじめとする研修会の開催、活動資金作りのためのクリスマスコンサート、チャリティバザーの開催などの活動を通して、患者や家族へのサポートを行っている。これらの活動は、ALS以外の難病患者や高齢者の療育環境の改善にもつながっており、全国のモデルになりうるものである。
こうした活動は、県支部の活動に賛同する人たちの善意で支えらており、支部に加入する患者の割合は約6割と、全国平均の約2割に比べてはるかに多い。鹿児島県内全域に介護職員を派遣する事業所の開設を目指すなどして、ALS患者とその家族が普通に暮らしていける福祉社会の実現に取り組む活動を続けている。
(2004年設立 支部長 伊瀬知 礼子
事務局長 里中 利恵 鹿児島市)
団体 「大隅家守舎」(おおすみやもりしゃ)
民間主導によるまちづくりやリノベーションによる大隅地域の活性化
民間主導でまちづくりのイベントやリノベーションの活動を続けている団体。民間の発想と、それぞれの仕事を持つスタッフの個性を生かし、大隅を住みたくなる場所に、また誇りを持って楽しく暮らしていける場所にすることを目指している。
イベントでは、大隅の豊かな食と暮らしを発信する定期マーケット「食と暮らしのマルクト@おおすみ」を鹿屋市で毎月開催、こだわりの食材や料理、個性豊かな雑貨などを販売している。平成27年9月以降48回開催、出店者も延べ1200に上っている(2020年7月1日現在)。毎回、県内各地からの来場者で賑わうが、出店者にとっても付加価値の高い商品作りや販路拡大を図る貴重な機会となっている。
リノベーションでは、廃校となった鹿屋市の菅原小学校をリニューアルした体験型宿泊施設「ユクサおおすみ海の学校」を平成30年7月に開校させている。宿泊施設に加え、大隅の食材を使った食堂、マリンスポーツやサイクリングなどを楽しめるアクティビティの機能も併せ持つ観光交流拠点になっており、大隅でしか味わえない魅力ある日常生活を体験出来る場所になっている。
この他に、鹿屋市の飲食店街「京町通り」の活性化イベントや、空き家を利用しての飲食店の開店などにも取り組んできたが、行政だけに頼らず、自らリスクも負いながら持続可能な地域活性化事業に取り組むことで、新しい地域力を生み出し続けている。
(2015年設立 代表取締役 川畠 康文 鹿屋市)