第54回(2021年度)MBC賞 受賞者
団体 「社会福祉法人 白鳩会」(シラハトカイ)
農業と福祉が一体となった農福連携への先進的な取り組み
社会福祉法人白鳩会は、知的障がい者の生活介護などを行う福祉施設を運営すると共に、障がい者が農業に携わる「農福連携」に取り組み、その先進的な活動が高く評価された。
1978年に農事組合法人根占生産組合を設立、農福連携の場となっている「花の木農場」は、白鳩会と根占生産組合の2法人が連携して運営している。農地確保等を根占生産組合が行い、白鳩会の施設の障がい者が農作業や加工などに取り組んでいる。
南大隅町の施設で受け入れている障がい者は約130人で、農場の面積は約40haあり、3ヶ所に分かれている。花の木農場Tでは、主にお茶とニンニクの栽培、花の木農場Uでは、ミニトマト、イチゴなどの施設栽培、花の木農場Vでは養豚業に取り組み、障がい者それぞれが能力に応じて仕事をこなしている。
また、農作業が無い時期もあることを踏まえて、6次産業化を図り、加工・製造、アンテナショップやレストランの経営にも取り組みを広げて、通年での活動支援の場を作っている。今年3月には、農林水産省などが中心となって実施した、農業と福祉をつなぐ農福連携の優れた取り組みを表彰する「ノウフク・アワード2020」で、全国195団体の応募の中から初代グランプリを受賞した。障がい者が自信や生きがいを持って社会に参画すると共に、担い手不足や高齢化が進む農業分野での働き手の確保につながる取り組みは、共生社会、持続可能な社会の実現に大きく貢献しており、今後ますますの発展が期待される。
(1972年設立 理事長 中村 隆一郎 肝属郡南大隅町)
団体 「かごしまこども食堂・地域食堂ネットワーク」
子ども食堂の運営を通じて新たなコミュニティの創造に貢献
子供の貧困対策や地域交流の拠点として注目されている「子ども食堂」。経済的な理由や家庭の事情によって、栄養のある食事を摂ることが出来ない子供達を支援する目的で、2012年頃東京で始まり、地域住民やNPO法人によって全国的な広がりを見せている。
「かごしまこども食堂・地域食堂ネットワーク」は、県内各地の「子ども食堂」がお互いに支えあっていこうと、2018年に設立されたもので、現在70の「子ども食堂・地域食堂」が加盟している。各食堂は、新型コロナウイルスの感染拡大という状況で様々な制約もある中、原則として月1回以上開催、地域のボランティアが中心になって運営を続けている。
「かごしまこども食堂・地域食堂ネットワーク」は、「子ども食堂」の開設を考えている方々の支援、「子ども食堂」を利用する子供や保護者が安心して過ごせる環境作り、「子ども食堂」を取り巻く環境や運営上の問題点、行政や支援団体からの情報を共有していくことなどに力を入れている。
昨年6月には鹿児島銀行と「食の寄贈についての合意書」を締結、鹿児島銀行が購入した余剰農水産物や通常だと廃棄される規格外商品を、無償で提供してもらい、「子ども食堂」で活用している。鹿児島銀行と連携して、生産者支援やフードロス削減、県産品活用による食育にもつなげている。
子供の貧困対策だけでなく、地域が子育てをしていく場として、また、ボランティアとして運営に携わる高齢者の生きがいの場として、役割も広がってきており、「かごしまこども食堂・地域食堂ネットワーク」全体として、運営者同士で助け合い、食を通した地域の新たなつながり、コミュニティを創り出している。
その役割は、今後ますます社会での重要性が高まっていくと思われると共に、将来を担う鹿児島の子供達の未来を守る取り組みが高く評価された。今後ますますの発展が期待される。
(2018年設立 代表 園田 愛美 鹿児島市)
団体 「株式会社 セントラル楽器」
奄美の音楽文化の拠点として島唄や民謡の保存と普及に貢献
奄美でCDや楽器の販売を手掛けると共に、島唄を始めとする奄美の音楽を収録している音楽レーベルでもある。更に、地元で歌謡イベントも主催するなど、奄美の音楽文化の保存・継承に欠かすことの出来ない存在となっている。
島唄は、奄美の生活の中で歌い継がれてきたもので、決まった歌詞や楽譜も無く、レコードで販売するという発想は元々無かったが、セントラル楽器は、「島唄を形に残そう」と、1956年頃からレコード化を始めた。
店内には三味線やチヂン(島太鼓)などの楽器の他、島の唄を一つひとつ自ら録音して制作したCDやテープがずらりと並んでいる。親子三代に渡り、録音・制作してきた自主レーベルのCDやテープは、これまでに200タイトル以上、2000曲に上る。オープンリールテープレコーダーでの録音からスタートした音源の中には、すでに亡くなった奄美島唄を代表する名唄者や、ポップス歌手として活躍している元ちとせさんのデビュー前15歳の時の唄声など、貴重な記録も含まれている。
2012年からは、島唄などの音源をデジタル化して、インターネットによるダウンロード配信をスタート、それまで島外で殆ど販売されていなかった奄美の音楽を、国内はもとより世界中に発信し続けている。
また奄美ゆかりの歌い手たちが出演する「奄美紅白歌合戦」や「奄美のど自慢リモート選手権」など、歌謡イベントにも長年取り組んできており、奄美の音楽文化の人材発掘にもつながっている。
『音の文化で心を開く』という使命観と、『郷土の音の文化を発掘し発展させる』という誓いの下、70年以上に渡り、奄美の音楽文化の保存・継承・人材発掘に貢献すると共に、世界中に発信を広げ続けている取り組みが高く評価された。今後ますますの発展が期待される。
(1947年設立 代表取締役社長 指宿 俊彦 奄美市)